コミュ障カラスの生き物ブログ

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生物分類技能検定2級動物部門【合格体験記】

生物分類技能検定2級動物部門に合格しました。学生時代は遊びほうけて運転免許以外の資格は何一つ取っていなかったので、就職のためにも何か取っておくかと思い、まずは潜水士と生物分類技能検定に目を付けた。どちらも合格したので、合格体験記を書いてみることに。潜水士については別記事で。

試験の手応えはなく完全に落ちたと思い、試験直後から落ちたことを報告するポスト(ツイート)をし、落ちたことを報告するブログ記事を書き始めていた。

↑試験直後の発言。まさか受かるとは思わなかった。

というわけで、本記事は不合格体験記のつもりが合格体験記になり、戸惑いながらも喜びが抑えられず変なテンションになった筆者によって書かれました。どうか暖かい目でお読みください。

目次

 

はじめに

生物分類技能検定とは

まず生物分類技能検定とは何かというと、一般財団法人自然環境研究センターの認定する生物分類の検定試験で1級~4級まであり、2級は動物部門・植物部門・水圏生物部門の3つに分かれていて、1級はさらに細かく専門分野が分かれている。3級・4級は部門が分かれておらず、動物・植物・水圏生物の全てが対象になる。

民間資格の1つであるが、1級、2級の登録者は環境省の「一般競争(指名競争)参加資格申請」の有資格者として認められており、そのほか林野庁地方自治体などの自然環境に関わる調査・保全業務等の入札資格としても取り入れられている。1級の受験には業務経験が必要であり、業務経験なしのアマチュアが取れる最高位は2級である(2級以下には受験資格なし)。

ちなみに65点以上で合格だそうだが、自然環境研究センターのWebページでは合格基準点が100点満点で70点となっている(2級の場合)。筆者はこれを見て「今年から基準点が上がったのか〜」と思い、結果発表まで70点以上が合格だと思っていたが、そうではないらしく今年も65点以上で合格だった。

 

受験動機

筆者が生物分類技能検定を知ったのは学生時代。所属していた研究室の机にチラシが置いてあった。名前だけは覚えたものの、そのときは何もせず。後に就活の際、応募資格として生物分類技能検定を取得していることが挙げられている会社をいくつか見つけ、これって取っといたほうが良いのでは?と思うようになった。

2級を選んだ理由は、筆者の興味のある分野が脊椎動物節足動物で、その一方植物は苦手であり、分野が分かれているほうが合格する可能性が高いと思ったから。また、仕事につながるかもしれないし、2級はかなり難しいと聞いていたので、難易度の高いことを乗り越えて自信をつけたかったというのもある。

 

試験勉強

まずは過去問を入手。これが無けりゃ始まらない。過去問と同じ問題が出ることはほぼないのだが、出題傾向を掴み、自分のレベルを知ることができるので、合格するためには必須である。過去問等はAmazonでしか売ってないみたい。

筆者が購入したのは2023年度版で、2019〜2022年度の問題が収録されている。購入した時期は4月。なるべく早くから勉強を始めたかったので、過去問が販売されたらすぐ買った。そして同時に図鑑も購入。生物分類技能検定はほとんど暗記問題であるためテキストがなく、過去問に解説もなく、とにかく自分で調べるしか勉強法がない。合格するためには図鑑は必須といって良いだろう。

 

過去問を入手したらまずは力試しに何も見ないで解く!.... と思ったが、図鑑を軽く読んでからにした。さすがにノー勉では手も足も出ないだろうからね。バイトの空き時間や通勤時間を利用して1週間図鑑を読み込み、今度こそ力試し。まずは2019年度の過去問。

結果は58点。点数を見れば健闘したといえるかもしれないが、終わった直後は「これ無理やろ....」と思った。分布、生息環境、食性、学名、さらに固有種、外来種、関係法令に加え、植物、菌類、生物の進化、分類の歴史などなど.... とにかく何もわからない。範囲が広すぎる。唯一の救いは鳥の問題の出来がかなり良かったこと(10問中9問正解)。鳥には勉強時間をあまり割かなくて良いとわかっただけでも収穫である。

 

試験は半年後の10月28日。過去問は4年分しかないので、1ヶ月勉強してから過去問を解くというスケジュールを立てた。ラスト2ヶ月は追い込み期間。

過去問で不正解 or たまたま正解した問題を図鑑で調べ、ノートにまとめることを繰り返す。さらにその過程で個人的に気になったことも調べまとめる。平日は時間が取れなかったので図鑑を読む程度しかできないが、その際に気になった点をスマホのメモ帳に記録し、土日にまとめて調べる。

↑ノートの一部

これを繰り返すこと4ヶ月。ついに過去問を1周。点数はこんな感じ↓

58点(2019年度)

69点(2020年度)

75点(2021年度)

63点(2022年度)

ビミョ〜.... 2021年度は勉強したところがドンピシャで出たので高得点を取ったが、それ以外は合格ライン前後である。結局のところ、やったところしか点が取れないのよね。点を取るためにはとにかく幅広く、色々なことを調べるしかない。もはや運ゲーの気がしてきた。

 

最後の2ヶ月は今までの勉強に加え総復習も追加。過去問をもう1周やってみる(うっかり問題用紙に答えを書いてしまったため、2020年度はやらず)。点数は以下の通り↓

82点(2019年度)

79点(2021年度)

83点(2022年度)

う〜ん思った以上に定着してない.... 過去問と同じ問題はほぼないとはいえ、定着してないというのは非常にまずい。自分は暗記が苦手という自覚はあったが、こうして結果を見せつけられると苦しくなる。今までまとめてきたノートを再度読み込み、さらに新しい分野の勉強も継続。

 

利用した資料

図鑑に関してはネットでオススメされてたものを使って勉強していたのだが、これが実際役に立った。Webページは試験とは関係ないときに見つけたものが多い。以下に筆者が利用した図鑑やWebページを挙げていく。参考になったら幸いということで。ただ、当然のことだが、分類は常に変わっていく。図鑑に書かれている情報が、今では古くなっているということもよくある。ネット等を利用して最新の情報に目を光らせておくことは、とても重要である。なお、筆者は合格後の使用も考え、持ち運びやすさも重視している。

※ここに記載した資料は、あくまで筆者が利用したものであり、この分野が出題されるとか、これを使えば合格できるというものではありません。図鑑にしろWebページにしろ、どういう用途・利用者を想定しているのかによって構成は変わります。その資料は自分が望む情報が手に入るのか、しっかり見極めるようにしましょう。

■利用した図鑑

哺乳類

くらべてわかる哺乳類(小宮照之 2023)

ネットでオススメされてたので購入。日本産哺乳類全種が掲載されているのはありがたい。ただし子ども向けなのか「~のなかま」としか書かれておらず、科とか目とかは自分で調べる必要がある。

 

フィールドで出会う哺乳動物観察ガイド(山口喜盛 2017)

こちらもネットでオススメされてた。上記の図鑑だけでは少し不安だったので新たに購入。種数は絞っているが、分布域が図示されていてわかりやすい。フィールドサインについて書いてあるので、必然的に生息環境や生態についても触れておりかなりお得。

 

鳥類

決定版 日本の野鳥650(真木広造, 大西敏一, 五百澤日丸 2014)

学生時代に趣味&卒論のために購入していたもの。写真が綺麗なので眺めているだけでも楽しい。日本で記録された鳥のほぼ全種が掲載されているうえ、各部位の名称も載っているので、鳥見のためならこれ1冊でだいたい間に合う。ただし生態についてはあまり触れられていないし、海外の分布域も図示しているため、広域分布種だと分布がわかりづらくなる。軽い鳥見程度であれば問題は無いのだが、生物分類技能検定の勉強という視点ではこの点はちょっと残念。

 

日本鳥類目録 改訂第7版(日本鳥学会 2012)

学生時代に卒論のために購入していたもの。各種を亜種にわけ、さらにその亜種の地域ごとの分布や渡り区分を載せている。鳥類の分布や渡り区分に関しては最新の情報でない限り、これに従っていれば大丈夫そう。図鑑ではなく目録なので「見やすさ・読みやすさ」は二の次なのが難点か。なお、2024年9月に改訂第8版が出版される予定。

 

爬虫類・両生類

野外観察のための日本産爬虫類図鑑第3版(関慎太郎 2022)

野外観察のための日本産両生類図鑑第3版(関慎太郎 2021)

両爬はほとんど知らないので、とりあえず日本産全種を掲載しているものを探した。学名や分類が載っているページと解説ページが別なのがちょっと使いづらいが、日本地図や全種リストもあるので、総合的にはかなり良いと思う。

 

フィールド探索記 46種の写真掲載・種同定・生態調査に役立つ 日本のサンショウウオ(川添宣広 2021)

筆者が両爬で一番不安だったのがサンショウウオ。見た目では識別できない新種が次々と記載されているイメージを持っており、とにかく現状を把握したいという思いで、新しく、写真が多く、日本産全種が掲載された図鑑を探した結果出会った。写真が綺麗で見た目でも覚えられるし、学名や産卵場所まで載っているのもありがたい。

 

魚類

三溪ハンディ図鑑15 増補改訂 日本の淡水魚(細谷和海 2021)

オススメされてたので購入してみたが想像以上であった。分類や学名、鰭式や鰓耙数、自然分布と人為分布、種の保存法レッドリストカテゴリーまでなんでも載っている。さすがに最新の分類には対応しきれていないところもあるが、この本の内容を隅から隅まで一字一句暗記すれば、魚類の問題の9割くらいはとれるのではないだろうか?(現実的に考えて無理)

 

日本のドジョウ(中島淳, 内山りゅう 2017)

日本のタナゴ(北村淳一, 内山りゅう 2022)

タナゴは絶滅危惧種が多いということでレッドリスト関連でも出るのではないかと思い購入。ドジョウは個人的な興味。タナゴとドジョウに特化しているから、分布、生息環境、同定のポイント、さらにはタナゴやドジョウを扱う文化まで、内容は非常に濃い。

 

昆虫類

ネイチャーガイド 日本の水生昆虫(中島淳, 林成多, 石田和男, 北野忠, 吉富博之 2020)

実質タダでお馴染みの図鑑。日本産の既知の水生昆虫を網羅した図鑑であり、水昆に関してはこれ1冊でだいたい間に合う。生態写真も豊富で見るだけでも楽しい。確かにコスパは抜群ですわ。

 

ネイチャーガイド 日本のトンボ 改訂版(尾園暁, 川島逸郎, 二橋亮 2022)

フィールドガイド 増補改訂版 日本のチョウ(日本チョウ類保全協会 2019)

チョウとトンボの問題は頻出と聞いたので購入。和名・学名はもちろん、分布、生息環境、出現時期、同定のポイント、レッドリストカテゴリーに加え、トンボの本にはヤゴ、系統樹、チョウの本には食草も載っている。

 

共通問題など

徹底図解 動物の世界(三浦慎悟 2011)

いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律(中島慶二, 益子知樹 2022)

新しい植物分類体系 APGでみる日本の植物(伊藤元己, 井鷺裕司 2018)

ネイチャーガイド 西表島の自然図鑑(堀井大輝 2020)

共通問題は範囲が広く、生物に関することは何でも出ると言って良い。広く深く出るので資料はいくらあっても足りないレベル。また、これは個人的なイメージだが、哺乳類は他の分野に比べ海外のものが多く出題される気がする。種数少ないから国内だけじゃ限界があるのかも。

 

■利用したWebページ

Wikipedia

なんだかんだ使えるWikipedia。菌類、藻類、分類階級、系統樹など、主に共通問題で利用した。図鑑に載ってない情報はまずWikipediaで確認していた。

 

国内希少野生動植物種一覧 | 自然環境・生物多様性 | 環境省

特定外来生物等一覧 | 日本の外来種対策 | 外来生物法

環境省レッドリスト2020の公表について | 報道発表資料 | 環境省

国内希少野生動植物種特定外来生物レッドリストに指定されている種を答えさせる問題は頻出。最新の情報を手に入れるようにしよう。

 

日本のけものたち

日本の哺乳類について書いてあるサイト。豊富な写真やイラストはたいへん参考になった。

 

トウキョウトガリネズミ(least shrew) – 新たな視点から

ガリネズミに関することを扱っているサイト。マニアックではあるが、それゆえ一般的な図鑑では載ってないような情報が得られる。

 

止水性サンショウウオ類の保全の手引き(PDF)

資料そのものよりも、最後のページの日本産サンショウウオ科一覧を利用していた。和名・学名や産卵環境がまとめられている。2023年に出されたものなので分類も新しい。なお、筆者は使わなかったが、最新の分類に関しては日本産爬虫両生類標準和名リストを参考にすると良いかも。

 

Web両爬図鑑

さすがに全種はないが、各種について詳しく書いてあるので重宝した。写真も綺麗。

 

雑魚の水辺 日本淡水魚

魚の写真が綺麗で、かつ豊富であり、形態・生態に関する記述もたいへん参考になった。管理人のコメントも面白い。

 

yagopedia/同定・鑑別図鑑

ネットで調べるとヤゴの問題が出るとあり図鑑を買おうと思ったが、結局このサイトにすることに。1種1種が詳しく解説されてるし、写真も多いし、識別点の記載もある。不安な人は図鑑と併用しても良いかも。

 

試験&結果

そして迎えた試験当日。最寄りのテストセンターへ赴き試験開始。

そして問題を見て愕然.... 全然わからん....

ある程度は予想はしてたが「そんなん知らんし....」という問題がズラリと並ぶ。また、4つの選択肢のうち2つはわかるが残り2つがわからないものも。結果として自信のある問題は半分くらい。これはどうだ?単純に考えると正解を選ぶ確率は1/4なので、点数は60点台前半となる。選択肢を2つまで絞れた問題の正答率を1/2としても60点台後半くらい。この時点では70点以上が合格だと思っていたので、「ギリギリ受かるか?でも無理だろうな....」という気持ちだった。

 

傾向としては昆虫を含む節足動物は全般的に自信がなく、それ以外の生物では分布の問題で結構つまづいた感じ。種とその形態を覚えることをメインに進めたのだが、分布に手が回らなかった。昆虫などは範囲が広いのでチョウ・トンボ・水生昆虫に特化して勉強してたのだが、その辺りの問題はあんま多くなかった。やっぱヤマ張るのは良くないっすね....

そして出来ると思っていた(過去問では出来ていた)鳥類で間違えたのがすごく悔しい。亜種や分布をあまり意識しない筆者のスタンスがこんな形で露呈するとは.... ただ哺乳類については種数が多くないこともあって比較的出来た。過去問でダメだったから意識的にやっていたのだが、その成果が出たようだ。

 

そして約2ヶ月後の結果発表。正午発表なのでお昼ご飯を食べながら結果を確認。潜水士試験のときはドキドキしたのに、こっちは落ちてると信じ切っていたから全然ドキドキしなかった。

↑その結果がコレ。78点で合格。声出そうになった。78点も取ってたのか.... 自信がなく勘で選んた問題が半分以上正解していたことになる。何かの間違いなんじゃないかと何度もマイページを確認した。

兎にも角にも、約半年間の勉強期間で、筆者は生物分類技能検定2級動物部門に合格することができました。

 

感想

合格した感想は、一言で言うと「疲れた.... 」

何せ過去問を完璧に解けたとしても受かる保証はなく、自分で出来ないところを見つけ、勉強していかなければいけないのだ。受け身では間違いなく落ちていただろう。自動車運転免許の筆記試験より遥かに難しい。

とはいえ、思ったより簡単に取れたという気持ちがあったのも事実。筆者の場合、昆虫は種数が多過ぎるからという理由で早々に切り捨て、チョウ・トンボ・水昆に絞って勉強していた。ヤマが外れたにもかかわらず、我ながらよく合格出来たものだと思う。運が良かったことが一番なんだろうが、学生時代には周囲に虫屋が多く、筆者も影響を受けて昆虫採集をしていて、採集した昆虫を同定するため色々なサイトを読み漁っていたので、それなりに下地ができていたのかも。

そして、野外で実物を見たことがあるというのは大きい。画像問題はもちろん、生態や生息環境の問題においても、「その生き物をいつ、どこで見たか」を思い出せれば、ある程度選択肢は絞れる。筆者は鳥の勉強をほとんどしなかったが、それでも合格できたのはこうした理由だと思われる(まあ亜種とか分布とかを意識しなかった結果、何問か落としたんですが)。

何より、筆者が好きな「生き物」という分野に関する資格であり、意識せずともモチベーション維持が出来ていたという点が大きいだろう。やはり何かをするうえで、モチベーションはとても大きい。自分から動かなくてはいけない場合は尚更。これから受けようと思っている生き物好きな方々は、自分には大きなアドバンテージがあるのだと自信を持ってもらいたい。

 

筆者の場合は約半年間の勉強期間で合格したわけだが、人によってはもっと短期間の勉強で合格できるかもしれない。運の要素も大きいし。興味のある方はぜひ挑戦してみてください。本記事がお役に立てたなら幸いです。

 


余談だがX(ツイッター)見てたら大学時代の同期や後輩も取ってたことが判明。やっぱ生き物屋は受験するみたい。

 

※2024. 4. 4 追記

2023年度の合格者数や合格率などが発表されました。2級動物部門の合格率は4.2%で、なんでも過去最低らしい。最後の観察問題が鳥の羽ではなくトンボになった影響があるのではと、個人的には考えています。

2023年度の概要 | 自然環境研究センター