コミュ障カラスの生き物ブログ

生き物好きなコミュ障が気ままに書くブログです。

類似種比較

野鳥に限った話ではないが、生き物の同定というのは難しいものである。図鑑にここが違うと書いてあっても姿勢や光加減でその違いが見えなかったり、性差・個体差・年齢差があって場合によってはその特徴が無いということもある。

その一方で同定に必要な特徴が見えないのに直感的に「これは○○ではない」とわかる場合もある。イメージとしては「○○(種の名前)の型」が頭の中にあり、その「型」から外れた個体には違和感を覚える、という感じである。まあ個体差だったなんてことも多いのだけれど。

 

そこで今回は実際に似ているとされる種をいくつか比較して、どこら辺が「型」から外れていると感じるのか可能な限り言葉に表してみたいと思う。ただしこれには個人の主観がバリバリ入るものであり、さらに今回使う写真は僕が撮ったものなので写りが極めて悪いし、僕がたまたまそういう個体しか見てこなかったということもあり得る。そのことに注意しながら読んでいただきたい。

 

 

チュウヒ と ハイイロチュウヒ(メス)

 

f:id:komyushokaras:20201210202013j:plain(左がハイチュウ、右がチュウヒ)

正直そこまで似てるとは思わないが、自分はカメラを持つまで識別できなかったので載せる。

チュウヒは模様にかなり個体差があり一瞬戸惑うことがあるが、ハイチュウと似てるかと言われればそうでもない。というかハイチュウに個体差があまりないのでハイチュウの特徴がわかると間違うことはあまりない。

ハイチュウは翼下面の斑がはっきりしているし、顔盤を縁取る線がはっきりと見て取れる。腰の白帯についてはチュウヒにも見られるが、ハイチュウのほうが純白に近く、面積も大きいとされる。しかし右下の写真を見てほしい。純白ではないが太い白帯があり、それが体下面まで続いている。ハイチュウの白帯は純白で体下面まで続かないのでこの時点でチュウヒの可能性が高いといえるが、白帯の有無や太さばかりに気をとられると誤同定するかもしれない。

ハイチュウは翼上面にもうっすらと斑が見られ、尾羽にも縞模様がある。この特徴はチュウヒよりもオオタカ幼鳥と似ている。妙な言い方だが個人的にはハイチュウのほうが「鷹っぽい」模様をしていると思う。

 

 

 

 

ハシブトガラスハシボソガラス

 

f:id:komyushokaras:20201210211403j:plain(上がハシブト、下がハシボソ)

同じ場所に棲み同じタイミングで繁殖し同じねぐらを利用することも多いこの2種(正確には微妙に棲み分けており、繁殖期はハシボソのほうがちょっと早い)。鳥に明るくない人に「街中にいるカラスは1種ではなく2種である」なんて言ったら驚かれるだろう。

よく「おでこが出っ張っているのがハシブトガラス」「頭が丸いのがハシブトガラス」といわれるが、あれは骨がそういう形をしているのではなく羽毛を逆立てているだけである。ハシブトは時々この写真のように羽毛を寝かせるので頭の形だけでは判別できないこともある。

この2種はやはり和名の由来にもなった嘴で見分けるほうが良い。太さもそうだが、ハシブトの上嘴は強いアーチを描いて下へ突き出す。ハシボソはアーチが弱く突き出しが弱い(ただしハシブトの中にもあまり突き出さないものがいる)。

しかし1番わかりやすいのは鳴き声である。ハシブトは「カー」とか「アー」と澄んだ声で鳴くが、ハシボソは「ガア゛ア゛ア゛」または「ガラララ」と濁った声で鳴く。ハシブトも「ガー」という声を出すが、ハシボソより澄んだ声である。

ちなみに幼鳥は成鳥より嘴が細く羽毛が伸びきっておらず鳴き声も違うので注意が必要。

 

 

 

 

ユリカモメとズグロカモメ

 

f:id:komyushokaras:20201210214227j:plain(上がユリカモメ、下がズグロカモメ)

これもそこまで難しくはないが、羽色はほぼ同じであるため現物を見てもわからないのではと不安になった思い出があるので載せる。

彼らの違いは嘴の色と長さである。ユリカモメは赤くて長いがズグロカモメは黒くて短い。実際に見ると結構違うものである。

 

 

 

 

ツルシギとアカアシシギ

 

f:id:komyushokaras:20201210215755j:plain(上がツルシギ、下がアカアシシギ)

現物を見ると違いがはっきり分かることもあるが、現物を見てもわからないこともある。自分はシギチとカモメでそれが多い。

ツルシギとアカアシシギの違いは「ツルシギのほうが嘴と脚が長い」「ツルシギは下嘴基部が赤いがアカアシシギは上下の嘴ともに基部が赤い」「ツルシギの眉斑は眼の後ろまで伸びているがアカアシシギは目先まで」などがあるが、この写真では嘴と脚の長さくらいしか違いがわからない。ツルシギのほうが白斑が多いがこれが識別に使えるのかがわからない。あと気になったのはアカアシのほうがだいぶ脚が太いことである。こうして比べれば一目瞭然だが野外で見たときにわかるだろうか?

 

 

 

 

ジョウビタキ(メス)とルリビタキ(メスあるいは若オス)

 

f:id:komyushokaras:20201210222358j:plain(上がジョビ、下がルリビ)

これも違いがわかりやすいほうであるが、鳥の識別法を紹介する本やWebページで必ずといって良いほど出てくるので掲載。

ジョビには翼に白斑があり尾の付け根がオレンジ色で尾羽上面は褐色なのに対し、ルリビには白斑が無く脇がオレンジ色で尾羽上面は青い。

違いはわかりやすいが大きさや体型はほぼ同じだし同じ場所に現れることも少なくないし鳴き声も似ているので、距離が遠いうえに逆光という状況なら詰むかも(それはこの2種に限った話ではないが)。

 

 

 

 

イソシギとクサシギ

 

f:id:komyushokaras:20201211102613j:plain(上がイソシギ、下がクサシギ)

クサシギはまだ人生で1回しか見たことが無いが、我ながらよく気付いたものである。なんかデカいイソシギだなあくらいにしか思わなかったのだが、姿勢を変えても切れ込みが見えなかったのでそこで初めておかしいと思ったのである。

先述の通りイソシギは体下面の白色部が肩のあたりまで深く切れ込んでおり、これが最もわかりやすいイソシギ固有の特徴である。しかし翼のたたみ具合によってはこの切れ込みが見えなくなるので他のポイントを使う必要がある。

他の識別ポイントとしては、「クサシギは体上面に白斑が目立つ」「イソシギは風切羽より尾羽が突出するがクサシギはほぼ同じ」がある。尾羽の突出はこの写真でもわかるが、白斑に関してはこの画質ではほとんどわからない。種類がわからないときはいろんな角度からなるべく多くの写真を撮っておくほうが良いだろう。

 

 

 

 

オオタカハイタカ

 

f:id:komyushokaras:20201211104915j:plain(上がオオタカ、下がハイタカ

これもカメラを持つまで見分けられなかった鳥。たぶん未だに写真を撮らないと見分けられない。

オオタカの尾羽の先端は丸いがハイタカは角ばっている」というが確かにそのとおりであった。この写真のオオタカは尾羽を広げているが、それでも真ん中の羽が長く、閉じたときに真ん中が少し突き出て丸い感じになるんだろうな~とイメージはできる。

また「オオタカは翼下面の斑がはっきりしない」「オオタカは胴体の横斑が細かいので白く見える」ともいわれるがこの写真だと一目瞭然である。おそらく写真が鮮明でないことが幸いしたのだろう。図鑑の写真は大変鮮明であり、オオタカの斑もはっきり見えていたので「斑が目立たず白っぽい」といわれてもいまいちピンと来なかったのだ。実際図鑑のような鮮明な写真が撮れることなんてほぼないので「白っぽい」は有効な識別法なのだが、図鑑などでは鮮明な写真でないと識別点を示すことが難しいので場合によっては却って伝わりづらくなるのは仕方ない。

 

 

 

 

マガモ(メス)とオカヨシガモ(メス)

 

f:id:komyushokaras:20201211111214j:plain(上2枚がマガモ、下2枚がオカヨシ)

オカヨシガモの存在は鳥見を始めてから知ったのだが、図鑑でメスの写真を見たとき「これマガモじゃん・・・」となった思い出。

1番わかりやすいのは三列風切である。マガモの三列風切は幅広く目立つが、オカヨシの三列はわりと普通である。また、この写真ではわからないが、マガモの翼鏡は紫なのに対しオカヨシの翼鏡は白い。

また嘴の模様も異なる。オカヨシガモは真ん中に黒いすじがあり左右がオレンジ色で、個体によってはここに小さな黒斑がいくつも入る。それに対しマガモはずっと個体差が大きい。右上の個体のようにほぼ全てオレンジ色というものもいれば、左上の個体のように大きな黒斑があるものもいる。

あと、これはちょっと微妙だがマガモのほうが嘴が大きい気がする。そのせいなのかマガモのほうが平らな顔をしているように見えるんだがどうだろうか?

 

 

 

 

カワウとウミウ

 

f:id:komyushokaras:20201211111850j:plain(どちらも10羽ずつ。ウミウは一部と言いながら半分が幼鳥)

 類似種を比較してみようと思ったきっかけとなったのがウミウである。ある河川でカワウだと思ったらウミウだったということがあったのだ。下はそのときのツイート。

 この後カワウとウミウの違いを調べてみたが、「口角よりも顔の白色部に注目したほうが良い」というサイトが出てきたりしてよくわからなくなったのだ。ようやく比較できるときが来た。

まず口角に注目すると、個体差があるものの「ウミウは鋭角、カワウは鈍角」という傾向があることがわかる。また、ウミウは下顎の羽区と裸区の境界線が1段落ちているものが多い。

f:id:komyushokaras:20201211172510j:plain

ただしどちらも90度くらいのものが見られ、ウミウにも境界線の段がないものもいるのでこれだけでは断定は出来ない。

次に顔の白色部を見ると、確かにウミウのほうが大きいがそこまで大きな差はない(しかし画像検索すると白色部が大きく膨らんだウミウの写真がいくつも出てくる)。また幼鳥の場合白色部と黒色部の境が曖昧でこの方法は使いづらい。

最適なのは「総合的に判断」だろう。

 

 

 

 

さて、いろいろ見てきたがどれもなかなかわかりづらい。結局のところ経験を積むのが識別能力を上げる一番の方法だろう。

でもいきなり識別が難しい種を何度も見ようとするよりは、身近な種を何度も見たほうが良いと思う。そのほうが頭の中に「型」ができるのが早いと思われる。ただし図鑑等をよく読むことを忘れてはいけない。そもそも図鑑が無いと違和感を覚えてもその正体に気づけないし、身近な種さえわからないかもしれない。何事もそうだが基本を疎かにしては上達することなどないだろう。

 

こんな偉そうなことを言っておきながら盛大にやらかすのが僕なのでどうか皆さん、僕を甘やかさず見張っていてください。