コミュ障カラスの生き物ブログ

生き物好きなコミュ障が気ままに書くブログです。

ヒバリシギ疑惑

僕は過去の記事で「奄美ヒバリシギらしきものを見た」と何度も書いてきた。

九州遠征その6 2020-2-8 - コミュ障カラスの生き物ブログ

九州遠征その8 2020-2-10 - コミュ障カラスの生き物ブログ

ライフリスト - コミュ障カラスの生き物ブログ

 

その経緯をざっくり説明すると、奄美大島の某所で同行者がヒバリシギを見つけたが、僕は当時カメラを持っておらず、しかも同行者が指差すその鳥は双眼鏡でもよくわからないほど遠くにいたので、僕は撮影どころか観察すら諦め、近くで採餌していたトウネン(これも当時は同定できず同行者に教えてもらった)をスマ双で撮影していたのである。ところが後になって写真を見返すと、その中にヒバリシギらしき鳥が写っていたのだ。しかも2羽。

当時も同定に挑戦しようとしたが、「画質も荒いし、僕にはシギチの同定なんてできるわけがない」と思ってあまり真剣にやらなかったのである。しかし真剣に同定を行わない人間の識別能力が上がるとは思えない。自分の鳥屋としてのレベルを上げるためにも、一度真剣に同定することにした。

 

 <参考にしたサイト>

ヒバリシギ Long-toed Stint Stint Fan シギ・チドリ類 画像・識別専門サイト

http://stints.a.la9.jp/calidris/longtoedstint.html

 

 

まずは比較用としてトウネンの写真を 見ていただきたい。そのほうがトウネンとどこが違うのかわかりやすくなるだろう。

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上2枚は東よか干潟で撮影したもの(九州遠征その8 2020-2-10 - コミュ障カラスの生き物ブログより)。下2枚は奄美大島で問題のシギと同じ時間帯に同じ場所で問題のシギと同じくスマ双で撮影したもの。なんで画質の悪いスマ双写真を載せるかというと、スマ双だからヒバリシギっぽく映ったということではないことを示すためである。まあそんなことを言ってくる偏屈な人が本当にいるのかは知らないが、個人的にはこの点はしっかり確認しておきたかったのだ。

 

それでは問題のシギの写真を見ていこう。 

 

 個体1

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羽色はヒバリシギの夏羽または幼羽に似ている。コントラストが強く、頭部の帽子状の模様が目立つ。背中のV字模様(横からだと白いラインにしか見えないけど)も確認できる。嘴はわずかに下湾し、脚はトウネンより長い。脚の色に関しては嘴より薄く見える(トウネンは脚も嘴も黒いのに対しヒバリシギは嘴は黒いが脚は黄色である)が、光加減や泥の影響もあるだろうから不明としておくべきだろう。最も目立つのは趾の長さである。トウネンよりも遥かに長く、ひどくアンバランスな印象を受ける。

 

 

個体2

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あまりコントラストは強くなく、背中のV字も薄いか、あるいは無いかもしれない。頭部の帽子状の模様ははっきり認められる。ヒバリシギならば冬羽か摩耗個体だろう。嘴はわずかに下湾し脚はトウネンよりも長い。趾も長く見えるが正直わかりづらい。脚の色は個体1同様、嘴よりやや薄く見えるがわからないとしておく。

 

 

以上のことから、個体1はヒバリシギの可能性が高いが、個体2は不明であるという結論に達した。個体2はトウネンではないが、ヨロネン(ヨーロッパトウネンの略。別名ニシトウネン)などとの区別がいまひとつつかない。それに対し個体1は羽色や趾など、ヒバリシギの特徴がよく出ている。今まで見ていた資料ではヒバリシギの識別ポイントとして、背中のV字と黄色い脚が挙げられていたので、脚の色がわからないこれらの写真では同定が出来ないと思っていたのだ。今回、趾の長さでも識別できるということが分かったのは大きな収穫だった。もちろん趾だけでは完全な識別はできないだろう。他の部分も見て総合的に判断するべきである。それと趾についてあまり載っていなかったのは対象が小さいうえ、水に浸かったり地面の凹凸に隠れたりして見えづらいので積極的に使っていくことが難しいということもあるのだろう。

 

何はともあれ個体1はヒバリシギとしてもいいだろう。以前の記事(→ライフリスト - コミュ障カラスの生き物ブログ)でヒバリシギはライフリストに入れていないと書いたが、ぶっちゃけコサメビタキ(→サメビタキ属の同定 - コミュ障カラスの生き物ブログ)よりも遥かに信憑性が高い。コサメビタキをライフリストに入れるならヒバリシギも入れることができるんじゃないかと思って同定してみたがその通りになった。僕のライフリストの209種目はヒバリシギになりました。