コミュ障カラスの生き物ブログ

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恐竜博2023 その2

その1はコチラ→恐竜博2023 その1(ついでに鳥見) - コミュ障カラスの生き物ブログ

 

恐竜の卵

卵化石は単独で見つかった場合どの恐竜が親かわからないので独自の分類法があるらしい。“エロンガトウーリサス”ってなんか聞き覚えがあるな....?と思ったが、恐竜博2019でマクロエロンガトゥーリトゥス(Macroelongatoolithus sp.)が展示されていたのを思い出した。当時はよくわからなかったが卵化石の分類名だったのね。なお、マクロエロンガトゥーリトゥスとともに見つかった胚の化石は2017年にベイベイロン・シネンシス(Beibeilong sinensis)と命名された。ギガントラプトルにも匹敵する大型カエナグナトゥス科とされているが、成体の化石は未だに発見されていないようである。

 

ヘスペロサウルス・ムジョシ(Hesperosaurus mjosi

図録では「プレートは背骨に沿って左右交互に傾くように一列に並び」とあるが、解説パネルにあるイラストはご覧の通り2列に並んでいる。これ整合性とれなかったんか?

個人的に気になった点は第一頸椎?からは長い頸肋骨が下方に伸びているが、その他の頸肋骨は短く後方を向いているところ。なんでこうなってんだろう?

 

タラルルス・プリカトスピネウス(Talarurus plicatospineus

どこかで見たな...?と思ったが、去年の化石ハンター展にいたんだった(記事はコチラ→化石ハンター展 ~ゴビ砂漠の恐竜とヒマラヤの超大型獣~ - コミュ障カラスの生き物ブログ ※タラルルスは記事には出てきません)。潰れているのかもしれないが、何度見ても頭の小ささに驚く。

 

アニマンタルクス・ラマルジョネシ(Animantarx ramaljonesi

ズール含めアンキロサウルス科が多いが、ノドサウルス科もちゃんと展示されている。ノドサウルス科好きの筆者には嬉しい構成。アニマンタルクスって初めて聞いたけど超かっこいいな。ちなみにこの子も解説パネルのイラストと肩トゲの位置が一致していない。展示ではサウロペルタのように上を向いているが、イラストではボレアロペルタのように横を向いている(ただしサウロペルタの肩トゲの向きについては特に根拠はないらしい)。

 

ズール・クルリヴァスタトル(Zuul crurivastator

そして皆様お待ちかねのズール。この空間だけえらく暗いが、おかげで頭骨がくっきりと浮かび上がる。多少変形しているが見事な保存状態で、まるでツタンカーメンのマスクと対峙しているかのような迫力である。

腹側のレプリカ。ズールの化石はクリーニングを進めていくと腹側が現れる→さらに進めていくと裏向きの皮骨が現れる→これ背側も残ってるんじゃね?背側を露出させるにはひっくり返さないと無理じゃね?→ひっくり返した後、背側のジャケットを開封する際の振動などから保護するにはせっかくクリーニングした腹側を再び埋めなければならない→仕方ない!石膏で埋め戻して決行!という流れだったそうなので、実物の腹側はもう見られないらしい。じっくりと目に焼き付けよう。

おそらく恐竜博2023の目玉であるズールの実物化石。上の写真は後ろから、下は前から。ズールの全身をじっくりと観察できる親切設計。まるでミイラのような産状である。大きな皮骨の間に小さな皮骨がびっしりと並び隙間を無くしている。表面の角質や皮膚の痕跡も残っているという。

破損した皮骨(左)。位置は脇腹の辺りであり、同種間の争いで傷つけられたものとされている。ズールの皮骨は背中のものは円錐で、脇腹に近づくにつれ大きく平たい三角形になるそうだが、この傷と合わせて考えるとなんか示唆的。そしてボレアロペルタの肩トゲは横向き、エドモントニアの肩トゲは前方やや下向きであることも合わせるともしかして?(※個人的な妄想です)

頭部と頸部。アンキロサウルス科の頸にはハーフリングと呼ばれる皮骨がある。理由はよくわからないが前方のハーフリングのみ実物だそう。頭部はともかく第2ハーフリングはなぜレプリカなのだろう?さすがに残ってなかったか、あるいは破損していたのか。それとハーフリングで見えづらいけど4つの頸椎も組み込まれている。頸椎が実物かは不明。

尾の先端の棍棒は左右非対称だが、これは個体差なのか変形なのか。スコロサウルスを思わせる左右のトゲがありなかなかに厳つい。棍棒だけでなくこのトゲも強力な武器になりそう。アンキロサウルス科の棍棒は捕食者を欺くための「偽の頭」であったという説もあるが、これを見るとやっぱり武器だったんじゃないかと思う。

 

ズールvsゴルゴサウルス

ズールの実物展示を抜けるとズールとゴルゴサウルスの対決を再現した展示が。やはりこういう躍動感のある展示は大好き。

ゴルゴサウルスの腓骨にある骨折の痕。本当にアンキロサウルス科による傷なのかは不明だし、研究者も断言していない。あくまでも可能性である。

ズールの尾は左右にしか動かせなかったと聞いて「根元は腱で固められてないからよく動くんじゃないの?」と思っていたが、棘突起と血道弓がかなり高い。確かにこれでは上下の動きはかなり制限されるだろう。

 

ゴルゴサウルス・リブラトゥス(Gorgosaurus libratus

ロイヤルオンタリオ博物館が所有する有名な標本らしい(知らなかった...)。実物であり「ROM1247」の標本番号が書き込まれている。壁際に置いてあるが結構いろんな角度から観察できるようになっている。

歯は顎の骨の先端ではなくやや内側から生えている。そして歯の裏側(口の中側)は凹んでいる。また、鋸歯は歯の中ほどで途切れており根元にはない。やはり近くでいろんな角度から見ると新しい発見がある。

 

ズールの実物化石があまりにも凄すぎて、その後の展示が霞んでしまうのではないかと思えるほどのものだった(ポスターからして実際にズールが恐竜博2023の山場なんだろうけど)。最後はいよいよマイプが登場するのだが、長くなってきたのでその2はここで終了。その3に続く。

 

おまけ

ムツオビアルマジロEuphractus sexcinctus

皮骨を持つ哺乳類として展示されていた。顔つきがアリクイっぽいし、かつては貧歯目に入れられていたからなんとなく歯も貧弱だと思っていたが、意外と立派な歯を持っていた。なお、貧歯目は現在では解体されている。

 

その3はコチラ→恐竜博2023 その3 - コミュ障カラスの生き物ブログ