コミュ障カラスの生き物ブログ

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恐竜博2023 その3

その1はコチラ→恐竜博2023 その1(ついでに鳥見) - コミュ障カラスの生き物ブログ

その2はコチラ→恐竜博2023 その2 - コミュ障カラスの生き物ブログ

 

ティラノサウルス・レックス(Tyrannosaurus rex

手前が“タイソン”(Tyson)、奥が“スコッティ”(Scotty)。恐竜博2023のキーワードは「攻め・守り」なので肉食恐竜の極致とも言えるティラノサウルスが展示されているのは何もおかしくないのだが、若干の客寄せパンダ感を覚えてしまう。筆者の心はすっかり汚れてしまったようだ。ちなみに最重量級のティラノサウルスであるスコッティだが、年齢に関しては下方修正されてしまったとのこと。その一方で“スー”(Sue)は相変わらず最高齢クラスに居座っているらしい。

頭骨の比較。上がタイソン、下がスコッティ。形状はかなり違う。ただ、どちらも完全な頭骨が出たわけではないっぽいのでそこは注意が必要。

肩甲烏口骨と叉骨。上がタイソン、下がスコッティ。スコッティは肩甲骨と烏口骨が癒合しているが、タイソンは分離している。スコッティは肩甲骨は発見されているが、烏口骨などは発見されてないはずなのでここは推測か?

左がタイソン、右がスコッティ。ここの違いは完全につくり方の問題だろう。こういうのって「全身の〇%の骨が発見された!」ばかりが報道され、具体的にどこの骨が発見されたのかは論文を読まなければわからないことが多い。だから筆者のような素人が展示されている骨格を比較して違いを見つけたとしても、その違いが有効なものである保証は無い。結局のところ論文を見るのが一番なのよね。ちなみにタイソンの左足の趾骨には異常が見られるそうだが、筆者にはよくわからなかった。

なお、2021年に開催された恐竜科学博では“タフツ・ラブ”(Tufts-love)や“スタン”(Stan)が展示されていたので、気になる人はこちらの記事も見てほしい(→恐竜科学博 ララミディア大陸の恐竜物語 - コミュ障カラスの生き物ブログ)。

どうでもいい話だが、スコッティの頸の辺りにクモの巣があるのを見つけてしまった。

ティラノサウルス類は大型化する前から前肢が小さくなっていた可能性があるとのことだが、まさかラプトレックスのことじゃないよね....?それとも新たな発見があったのだろうか?

 

テスケロサウルスの一種(Thescelosaurus sp.)

意外にも完全に近い頭骨は数点しか発見されていないらしい。歯の形は生えている場所によって異なっていて一部の歯はステゴケラスに似ており、さらに歯のみ発見される場合が多いため、正しく同定されているか再検討する必要性があるとのこと。

 

スキピオニクス・サムニティクス(Scipionyx samniticus

内臓まで残っていることで知られる恐竜だが、なんと実物のホロタイプが来日。今のところスキピオニクスの標本はこれしか知られていないらしい。内臓以外にも筋肉や角質、捕食されたと思われるトカゲや魚の骨も確認されている。

 

カルノタウルス・サストレイ(Carnotaurus sastrei

南米の代表的な肉食恐竜。なんかかませにされてる。後肢は膝より下が見つかっていないが、大腿骨が長く、それゆえかなり脚が長く復元された。現在では後肢はもう少し短いほうが妥当とされている。筆者が子どもの頃、アベリサウルス科はどいつもこいつもスラリとした長い脚を持っていたが、それはだいたいこの「脚長カルノタウルス」のせいである。

皮膚痕についての言及はなかった(※図録にはある)が、代わりに前肢について詳しく解説している。短いが肩関節は丸く、筋肉さえあれば可動範囲は広かったと考えられており、何のために使っていたのかは不明。『Prehistoric Planet』(2022, 邦題は『太古の地球から~よみがえる恐竜たち~』)では求愛のために使われたとされ、ユーモラスなダンスを踊るカルノタウルスの映像が製作された。

 

メガラプトル・ナムンフアイクイイ(Megaraptor namunhuaiquii

マイプと間違える人が多かったが仕方ないだろう。頭骨見つかってたっけ?と思ったが、メガラプトルは幼体の頭骨が発見されているんだった。とはいえ成長に伴って形が変わる可能性はあるし、メガラプトル類はどれも化石が貧弱らしいので、頭骨以外もこれから大きく変わるかもしれない。

マイプ・マクロソラクス(Maip macrothorax

マイプはこっち。なんと実物。メガラプトルより一回り大きくてごつい。これは確かになかなか大きくて強そう。見つかっている骨の数が少ないのが残念。いや、少ないのが普通なんだけどね?それにパンデミックの影響もあったみたいだし。

再びメガラプトル。マイプもメガラプトルも意外と胴体は丸っこい。マイプは推定全長10mとのことだが、この胴体の幅ならアロサウルスやゴルゴサウルスよりも重いかもしれない。そして後肢はそこまで長くないしごつくもない。わりと普通な感じに見える。

メガラプトルといえば前肢のかぎ爪。彼らは前肢にシックルクローを持つ恐竜たちである(厳密にはドロマエオサウルス科のシックルクローとは形状が若干異なるそうだが)。ただ、シックルクローとなっているのは第一指のみ。写真左、第二指との厚さの違いがわかるだろうか?そして第三指は小さい。意外にも肩や肘があまり柔軟ではなく、この爪をどう使っていたのかがあまりわかっていないらしい。指の可動範囲は広く武器として使ったことは間違いないのだが....

 

フクイラプトル・キタダニエンシス(Fukuiraptor kitadaniensis

しれっと混じるフクイラプトル。今のところ最基盤のメガラプトル類とされており、前肢のかぎ爪はシックルクロー状になっていない。最初はドロマエオサウルス科、その後はカルノサウルス類、今ではメガラプトル類と所属は二転三転した。

 

ドードーRaphus cucullatus

おそらく最も有名な絶滅鳥。デカいとは聞いていたが確かにデカい。最近『ドードーをめぐる堂々めぐり-正保四年に消えた絶滅鳥を追って』(川端, 2021)を読んだばかりなので反応してしまった。とても面白かった本なので是非読んでほしい。いつかソリテア(Pezophaps solitaria)の骨格も見てみたい。

 

自然教育園ではカワセミが繁殖しているらしい。こんな堂々と報告してたら人が殺到するんじゃ...?と思ったが巣穴は公開してないとのこと。ナイス対応。

 

最後にもう一度不忍池で鳥見。夏羽に換羽中のユリカモメ。このとき(4月1日)はまだ、ほとんどのユリカモメは冬羽であり、頭が黒いこの個体はよく目立っていた。

 

ヨシを引っ張るカワウ。巣材にするつもりだったのだろうか?結局ヨシを折り取ることはできず去っていった。この他アオサギオオバンが見られた。

本日はこれで終了。ズールの実物化石のインパクトが強すぎて以降が弱めになってしまった感はあるが、スキピオニクスのホロタイプやカルノタウルスの前肢など興味深い展示が並び、全体として非常に良かったと思う。そしてメガラプトル類は良くも悪くもまだまだロマンであった。

そしてあちらこちらで恐竜を見たい子どもvs子どもと恐竜のツーショットを撮りたい親の闘いが繰り広げられていた。