コミュ障カラスの生き物ブログ

生き物好きなコミュ障が気ままに書くブログです。

特別展「恐竜図鑑ー失われた世界の想像/創造」

上野の森美術館で開催されている特別展「恐竜図鑑ー失われた世界の想像/創造」に行ってきました。

恐竜の復元は時代を経て変化していった。子どものころ見た復元とまるで違っていて衝撃を受けたという人や、筆者のように復元が変わっていく様子をリアルタイムで見ていた人も少なくないだろう。本展は恐竜発見から現在に至るまでの復元の変化を見ることができる。ありがたいことに多くの作品が撮影OKだった。

なお、作品についてはこのように表記します→『作品名』(作者:制作年)

ジュラ紀の海の生き物―ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』(ロバート・ファレン:1850年頃)

有名な絵だから図鑑に載っていたと思うのだが、その図鑑が思い出せない。見覚えはあるのでどこかで見たのは間違いないのだが。

 

『イグアノドン晩餐会へのオリジナル招待状、1853年12月31日』(ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ:1853年)

『シドナムの水晶宮におけるイグアノドン模型の中の晩餐』(1854年

有名な水晶宮クリスタルパレス)の晩餐会。こんな最高のシチュエーションで晩餐会とか羨ましいったらありゃしない。招待状も洒落ている。

 

ジュラ紀初期の海棲爬虫類』(ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ:1876年)

ホーキンズの絵は見覚えがあるものばかり。『ウォーターハウス・ホーキンズの絶滅動物図』(ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ:1857年頃)とかはいろんな図鑑で見た(気がする)。ホーキンズは魚竜はワニのような生き物だと思っていたことがよくわかる。

 

『アガタウマス・スフェノケルス(モノクロニウス)』(チャールズ・R・ナイト:1897年)

筆者はゆっくり恐竜解説を見るまで知らなかったが有名らしいチャールズ・R・ナイト。ちなみに筆者はアガタウマスも知らなかった。アガタウマスは最初に命名された角竜であり、この絵は当時知られていた角竜の要素を寄せ集めたものだとか。

 

『ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)』(チャールズ・R・ナイト:1897年)

いわゆる「闘うラエラプス」。絵は知らなかったが、この構図はしばしば見る。「世界最大 恐竜王国2012」の2頭のユティラヌスの骨格はこの絵をモチーフに組み立てられていたし、「Dinosaur Revolution」(2011, 邦題は「蘇る恐竜の時代」)でもクリオロフォサウルスが一瞬この構図になった。ナイトが恐竜界隈に非常に大きな影響を与えたことを実感させる。

 

ジュラ紀コロラド』(チャールズ・R・ナイト:1931年)と『ペルム紀―テキサス』(チャールズ・R・ナイト:1931年)

フィールド自然史博物館の壁画のための下絵スケッチ。定番のティラノvsトリケラの構図もこのナイト壁画が元ネタらしい。スゲーな。それとディメトロドンはこの頃から今と変わらない姿なのね。

白亜紀アルバータ』(チャールズ・R・ナイト:1931年)の鎧竜。エドモントニアのようだが尾の先端にはハンマーらしきものがある。エドモントニアの下半身は見つかっていないので、アンキロサウルス科を参考にしたんだろうね。

白亜紀―モンタナ』(チャールズ・R・ナイト:1931年)のサイン。ちゃんと「COPYRIGHT FMNH」と書いてある。でもこれらの絵はプリンストン大学所蔵だとか。フィールド自然史博物館とプリンストン大学って何か繋がりあるんだっけ?そこら辺は全然知らない。

 

『ステノプテリギウス・クアドリスキッスス』(ズデニェク・ブリアン:1964年)

おおー!この絵は見たことある....と思ったら知らない絵でした。でも似た絵は見たことあるんだよなあ....と思っていたら、かつて海外でも日本でもブリアンの作品の模写や転載が氾濫していたんだとか。そりゃ見覚えあるわ。

 

『ティロサウルス・ディスペロルとエラスモサウルス・プラティウルス』(ズデニェク・ブリアン:1963年)

おおー!この絵は見たこと(以下略)。ちょっと古い図鑑だとこういうモササウルス(orティロサウルス)vsエラスモサウルスという構図はよく見たな。筆者が生まれる30年以上前の絵なのに懐かしさを覚える。

波の部分のアップ。大胆かつ繊細な筆遣い。油絵でもこんな細かい表現ができるのね。絵って主役よりも背景が大変だったりするからこういうのは本当に参考になる。

 

トリケラトプス』(F・ジョン:1916年)

テオドール・ライヒャルト・カカオ・カンパニーが製作したトレーディングカード『太古の動物』のうちの1枚。トリケラトプスとなっているが、どう見てもアガタウマスです。本当にありがとうございました。

 

『ディプロドクスの群れ』(マーク・ハレット:1991年)

この絵も見覚えある。でもどこで見たかはわからない。最近のイラストになるとネットで無断転載されてたりするからもしかしたらそこで見たのかも。この辺りになると恐竜の姿形が最新の仮説に近くなってくるので、懐かしさは感じないが違和感もない絵になる。

 

『沼地での殺害―クリトサウルスを襲うフォボスクス』(ウィリアム・スタウト:1980年)

同時代の他の絵に比べデフォルメされた感じ。それにしても、デイノスクス(フォボスクス)は生命力溢れる張りのある肉体をしているのに、なぜクリトサウルスはこんなミイラみたいな姿なのだろうか?スタウトの作風なのだろうが、これはもう血が流れていることに違和感を覚えるレベルである。

 

『カルノタウルス・サストレイ』(ルイス・V・レイ:1995年)

全景は撮り忘れた。これ、腕の向き逆では?と思ったのだが....

恐竜博2023のカルノタウルスの前肢。う~ん肩関節をよく見るとあの腕のつき方でもよさそうに思える。サイエンスイラストレーターの観察眼を甘く見てはいけない。

 

『首長竜とサメ』(ダグラス・ヘンダーソン:1989年)

ヘンダーソンの絵はちゃんと見覚えがある。具体的にはニューワイド学研の図鑑。実際に見てた絵は懐かしさは感じるよね。筆者はこういう遠くから見たような構図が一番好き。筆者もこんな感じの絵を描いてみたい。でも背景が大変なんだよなぁ....

 

『ホースシュー・キャニオンでの遭遇』(ショーン・マーサ:1997年)

やっぱりこういう絵が好き。そして植物食動物の後ろに肉食動物という構図も好き(逆もアリ)。それにしても水面の表現がすごい。近くで見ると絵の具をペタペタ塗ったようにしか見えないのに、離れて見るとちゃんと水面なんだよな。こういう水面の描き方は、小学生のときにやったことはあるけど全然上手く描けなかったんだよなぁ....

 

『シチパチとサウロルニトイデス』(グレゴリー・ポール:1989年)

みんな大好きグレゴリー・ポール。これもニューワイド学研の図鑑で見たけど、1枚の絵だったのね。オヴィラプトロサウルス類は図鑑ではリンチェニアとなっていたが、『グレゴリー・ポール恐竜事典』を読むと「リンチェニア(あるいはキチパチ)・モンゴリエンシス」となっているので、ポールの中では間違ってはいないんだろう。それと、読み返してみるとニューワイド学研の図鑑は結構ポールの絵を使っていた。

 

『篠山層群産動植物の生態環境復元画』(小田隆:2014年)

このタッチも見覚えがあるが、こっちは小学館の図鑑NEO。ツイッターで小田さんの作品は見ていたのに、この展覧会に来るまで小学館の図鑑NEOの絵を描いていた人だと知らなかった。なぜ気づかなかったのか、我ながら信じられない。

 

あまり大きくないが、たいへん充実した展覧会だった。子どもの頃に読んでいた図鑑の絵を生で見ることができたという感動は大きかった。憧れていた世界を覗き込めるという体験は、いくつになっても楽しいものである。

余談だが図録がめちゃくちゃオシャレだった。